ブラック教員業界を支えるもの
2024/09/15
「残業代でないもんね」-高校教師を務める妻との会話の中で、教員の残業代について話す機会があった。
小中高校の教師は、いくら残業しても給料に反映されない。「教職員給与特別措置法」(「給特法」)という法律に基づき特別なルールが定められているからだ。この法律に基づいて、月給の4%が「教職調整額」として毎月支給される。
「なんだ。残業代が全く支給されないわけじゃないのか。」と思う方もいるかと思う。かくいう私もその一人だった。しかし、業務内容を聞いていくうちに「これでは全く割に合わない仕事ではないか」と思い始めた。
教員の仕事は、単に担当する科目を教えるだけではない。クラス担任を受け持つ教師は、授業だけでなく、クラスの生徒の精神面のケアもしなくてはいけないし、何か問題が発生すれば、業務時間外にも生徒やその親と連絡を取ることもある。
「朝は6時半に出勤し、昼休みは昼食を1分で食べて仕事に戻り、夜は11時過ぎまで学校にいる教員も少なくない、また自宅に持ち帰って仕事することも多い」と妻は半ば諦めた表情で語る。これでは「やりがい搾取」と批判されても仕方がない。一番問題なのは、「果たしてこのまま教育現場がもつのだろうか」ということだ。
そんな環境でも退職しない理由を妻や、小学校教師を務める友人に聞いた。
「充実感かな。正直教師も人間だから腹が立つこともある。だけど生徒が成長していく過程を見ることができる。自分も人間として成長できる機会を与えてもらっている。他の職場では経験できないと思う」とそろって答えた。
やりがいをもって職務に当たる教師によって学校教育が保たれている一方、長時間労働・上がらない給料、様々な要因で休職する職員も後を絶たない。
教育現場は、教員たちの自己犠牲によって成り立っている。昨今、「教職調整額」の上乗せも議論されているが、多岐にわたる業務量の多さを改善しないことには、「定額働かせ状態」は変わらない。諸外国では業務を一部委託するなどして、教員の業務負担を減らしている。このまま教員の状況が変わらなければ、教員志望者も減少し、教員の質の低下を招く。月並みな言い方になってしまうが、ひいては、将来の日本を担う子供たちへ の影響が大きくなる、それが一番心配だ。