あえて言う、日本共産党に期待
2024/10/16
「自民も立憲も国民の方を向いていない。彼らは自分たちの支持者のほうばかり見て質問している。その点、共産党は違う。共産党はちゃんと国民の方を見ている。法案の問題点を的確につかんでそれを国民の前に明らかにしようとしている」
8月某日。東京赤坂の個室居酒屋。永田町で活動する選挙リサーチャーは与野党の国会質問を比べてそう語る。おやおや共産党のことを語りだすはと珍しいと思っていると、その御仁、「自民党や立憲民主党などがとかく業界団体や労働組合のほうばかり見て、『私たちはあなたたちの利益のためにちゃんと頑張っています』と自己アピールに躍起になっている姿には辟易する」と語る。「国会はいったい何のためにあるのか。立法府と行政府との緊張関係はどうあるべきなのか。国会で政府の問題点をちゃんと指摘して、それによって国民の支持を獲得して、次の選挙で勝つ。これがあるべき政党政治の姿じゃないか」。内心「お説ごもっとも」と思っていると、続けて「国会中継を見ていてホントに面白くない。鋭い質問ができるのは共産党しかないかぁ」と嘆息。
何々? 鋭い質問? そう尋ねると、「共産党の議員はちゃんと勉強している。おそらく党として法案を徹底的に研究しているんだろう。私は、今は忙しくなったのであまり顔を出していないけど、少し前はね、自民党の(政調)部会によく顔を出していたんだ。それでわかるんだけど、共産党の質問ってホントに痛いところを突いてくるんだ」。
いわゆる事前審査制というやつだ。自民党は、国会審議に入る前に、党の政務調査会の部会で侃々諤々の法案審議を行う。「侃々諤々の法案審議」といえば聞こえはいいが、国民の目に見えない密室で、業界団体や支持団体への利益誘導をいかに図るかに汲々として議論している点は見過ごせない。自民党の税調などの審議過程では、法案のたった一言が企業の経済活動や国民生活に大きな影響を及ぼすからだ。なるほど自民党内の法案審議の行方を知っているがゆえに、共産党の国会質問が「鋭い」ということが肌身にしみてわかるというわけか。
ところで、この御仁、立憲野党がもっと力を伸ばして自民党と政権交代することを思い描いているとはいえ、突然、共産党のことをベタ褒め(?)しだすとは何かあったのだろうか? 日本酒を手酌で一杯やりながら続けて言う。
「いやいや別に何があったってわけじゃないよ。ただ今回の国会もさ、移動中の車の中で、中継聞いていたんだけどね、やっぱり田村さん(の質問)はいいなあと思ったわけ。共産党は、党員ではなくちゃんと国民の方を見ている。身内向けではなく、国民に支持を訴えるために質問しているなと。党員を増やすための質問をしているのは共産党だけということさ」。今年1月の党大会で志位さんに代わって、同党初の女性委員長に就任した田村智子氏(参院議員)。桜を見る会で安倍首相を追究した国会質問が記憶に新しい。党内の評判は上々だと聞いている。
では一体その「鋭い国会質問」とはいったいどんなものだったのか? 興味をそそられて聞こうとしたら、眠り込んでしまった。酔いに任せてつい本音が出ちゃったのか?
ただ帰り際、こうも付け加えた。「そうそう、さっきの話の続きだけどさ。共産党のことを褒めたけど、じゃあどうして、あの党はいい質問しているのに議席が増えないのかってなるでしょう。それはね。党員個々人の「個の力」が弱いんだと思う。末端の党員一人一人がもっと語る力を付けたら、あの党はもっと支持を得られると思う」。
あれ? この人、共産党の末端党員と付き合いなんかあったかな? そう疑問に思いながらも、確かに緻密な調査と鋭い国会質問で定評のある共産党が、なぜ長い党勢の低迷にあえぐのか? 今回の自民党の裏金事件の追及といい、あれだけの成果を誇る共産党がいまいち選挙で伸び悩むのはなぜなのか? 「共産党アレルギー」といった使い古された言葉ではなく、共産党と国民の間にある壁の正体がいったい何なのか? この壁を取っ払うことができれば閉塞する日本政治に一石を投じることができるのではないか? 酔いに任せてそう大それたことを考えながら大勢の酔客でごったがえす赤坂を通り抜け帰途についた。