コラム私感雑感

8月15日を前にして思う-加害者である日本-

イノウエ 2024/09/05

毎年8月15日が近づくと、反戦を訴え平和を願うドラマがテレビ番組で放送され、悲惨な戦争の惨禍が映し出される。唯一の地上戦が行われた沖縄、原爆が投下された広島、長崎の惨状、また数々の空襲被害、その多くは被害者としての側面がメディアでは取り上げられている。

 

しかし、日本による加害の一面は決して忘れてはいけない。旧日本軍が中国や東南アジアなどの占領地において、現地の女性を強制的に連行し性暴力を振るった。旧日本軍による従軍慰安婦の問題である。現在も被害者やその遺族によって日本を相手にした裁判が続いており、戦後80年になろうとしている今も解決されていない。

 

8月14日、東京都新宿区で、慰安婦問題の解決に取り組む『日本軍「慰安婦」問題解決全国行動』が集会を開いた。集会では、日本軍によって性暴力を受けた中国人女性の被害証言が朗読された。日本軍による聞くに堪えない蛮行―朗読者の若者たちの声に感情が乗り、文章をただ読む何倍も胸に響き、当時の情景が頭に浮かんだ。

 

被害者の中には、戦争が終わり日本から解放されたと思った途端に、母国からも「お前は、かつて日本軍とあまりに長く一緒いた」という理由で、数年間牢獄に送られた人もいたという。あまりにも理不尽な事実だった。

 

元被害者の朗読を行ったのは『希望のたね基金』メンバーの若者7人であった。希望のたね基金とは、日本の若者が慰安婦問題について学び、性暴力のない社会づくりを目指すための基金だ。

 

国が誠実な対応をせず、慰安婦問題の根本的解決を示しきれていないなか、日本と被害者国の民間団体が交流を持ち、問題解決に向けて今も取り組みを進めている。こうした運動の積み重ねが政府を動かし、被害者およびその遺族が納得のいく賠償、謝罪が行われることを切に願う。そのとき初めて日本は本当の意味で終戦を迎えられるのだと思う。