取材GRASSROOTSインタビュー室

初の 2000 年代生まれ国会議員 村木汀を生んだ自民党学生部とは何か

中村眞大 2026/04/30

衆議院議員選挙で予想外の候補者が当選した。比例北海道ブロックで自民党から立候補した村木汀(25 歳)。2000(平成12)年2 月14日生まれ、初の2000年代生まれの国会議員となる。

比例単独で名簿登載順位は 14位。明らかに比例票の積み増しのための立候補で、本人も「当選は完全に予想外」だったそうだ。しかし、その年齢ゆえか、当選当初からテレビやネットでは注目の新人議員として取り上げられている。

あの自民党が、いったい、どこからこんな若い候補者を連れてきたのだろう。若者の社会運動や政治運動を取材してきた私は最初そんな疑問を抱いていたが、すぐになるほどと合点がいった。

「経歴:自民党北海道連青年局学生部長」

なるほど、学生部出身者か! 村木氏の議員活動はまだ評価できる時機にないが、2000年代生まれ初の国会議員が学生部出身であるという事実は、私にささやかな希望を感じさせた。

「学生部」とは、各政党がもつ学生部門のこと。現在、日本の国政政党のうち、学生部を擁するのは、自由民主党、立憲民主党(りっけんユース)、日本維新の会、国民民主党、日本共産党(各学生支部など)、チームみらい(チームみらい学生チーム) 、社会民主党(社民ユース)で、公明党は結成準備中との報道があったが中道改革連合結成以降は動きが止まっている。参政党には類似のプロジェクトがあるが、正式発足には至っていない。中道改革連合には、先日非公式の「中道ユース勝手連」が発足した。れいわ新選組には、過去に非公式の「れいわ新選組若者勝手連」が存在していたが、2024年秋に解散。日本保守党と減税日本・ゆうこく連合には、類似組織も含めて存在していない。

筆者はこれまで、各党の学生部関係者との交流を通して、公式・非公式ともに取材を重ねてきた。本記事では、自民党学生部という知られざる組織のベールをほんの少し剥がしてみたいと思う。

自民党には全国 34の都道府県にそれぞれ学生部があり、18歳以上の学生 249人(令和5 年6月時点)が所属している。男女比は8:2と、男性が圧倒的に多いが、これは政党学生部全体に共通する傾向だ。党内では、組織運動本部の青年局(青年局長:平沼正二郎)という組織の下に位置する形となっていて、基本的には都道府県連ごとの活動が主となる。

ところで、自民党学生部に参加する学生は、どんな人なのだろう。これまでお話を伺ってきた複数名への取材を、ここでは、とある県連組織の学生部で活動する田中さん(仮名)、福田さん(仮名)の証言として再構成する。

自民党に参加したきっかけは人によって様々だが、長期にわたって政権を担ってきた経験値や、地方議会での影響力など、政策を実現する能力やネットワークの広さに惹かれて入党する人は多いようだ。

「政治に興味を持ったきっかけとしては、やはり安倍元総理の影響が大きいですね。安倍さんがトランプ大統領と外交をしている様子をテレビで見ていて、幼少期はずっと総理大臣が安倍さんだったこともあり、政治家といえば安倍さんというイメージが強くありました。大学に入ってからは、何か政治に関わる活動がしたいと思い、以前から興味のあった自民党学生部に入りました。実は、自民党自体をめちゃくちゃ応援しているというほどではないのですが、与党として政策の実現力があることや、公約が現実的だと感じたことか
ら、自民党を選びました」(田中)

「実は、親戚のおじさんが地元で自民党の議員をしていて、大学に入ったばかりの頃に選挙のウグイスを手伝ったのが始まりです。その後もさまざまな候補者のウグイスを務める中で、候補者が違えば、考え方も違うし、それを支援する人たちの雰囲気も違うことに気づきました。この選挙のときは年配の方が多いな、今回は若い人が多いなといった違いを見るのが面白く、次第に関心を持つようになりました。そうした流れの中で、おじさんの紹介で学生部を知り、参加することになりました」(福田)

「他党と比べた自民党学生部の強みは、やっぱり現役の大臣に声を届けられるということでしょうか。2022年には、全国の自民党学生部が協力して作成した若者向け政策の提言を小渕優子党組織運動本部長(当時)に提出したこともあります。また、青年局主催のイベントに総理大臣が出席したこともありました。世の中を良くしたいと思った時に、それを最短距離で実現できるのが私たちの強みなんじゃないかなと思います」(田中)

普段はどのような活動をしているのだろうか。

「私たちの県連では、月1回の定例会に加えて、青年局のイベントや役員会に月2 回ほど出席しています。これまでは勉強会の運営にも関わっていましたし、学生部としての街頭演説の実施や、議会見学、自衛隊基地などへの視察にも参加してきました。ほかにも、バーベキューやお花見などのレクリエーションを通じた交流も行っています」 (田中)

「私たちも、月に一度は必ず集まっていて、政策プレゼンコンテストに向けた準備を行っています。また、年に 2〜3回ほど県内の議員の方々との懇親会に参加したり、地域のお祭りやイベントに招かれて足を運ぶこともあります」 (福田)

自民党と聞くと、どうしても伝統ある組織のイメージが強いが、次世代を担う若者たちが集まる学生部は、どうような雰囲気なのだろうか。

「都道府県連ごとによるというのが答えになると思います。ただ、やはり歴史のある大きな政党なので、どうしても意思決定に時間がかかったり、組織を重んじるような風潮はあるかもしれません。ただ、私たちの県連では参加基準も比較的緩く、党籍も必要ないとしていますし、普段の活動も私服で行っています。一方で、一番お堅めと言われているのは東京都連学生部で、名称も唯一『自由民主党学生部中央執行委員会』となっています。こ
れは1956年に全国で初めて学生部として発足した当時、党直轄の組織だったことに由来しており、1967年に東京都連に移管されてからも、その名称は変わっていません。活動もスーツが基本で、入党条件も党籍が必須だったりと、比較的厳しい基準が設けられています」 (田中)

都道府県連ごとの活動に重きを置く自民党学生部だが、全国組織が全くないわけではない。2022年に、小倉将信青年局長(当時)の肝入りで、各都道府県連学生部をまとめる全国協議会が設置されてからは、毎年春頃に党本部で総会・研修会が実施されるようになった。総会に合わせて、各都道府県が持ち寄った政策を競う「政策プレゼンコンテスト」も開催されるようになるなど、学生部全体としての活動も生まれたが、それでもまだ、活動は都道府県連単位の域を出ておらず、全国協議会の存在感も十分に発揮できていないというのが実情のようだ。

自民党は先の衆院選で 316議席を獲得し、日本最大与党の座を再び確固たるものとした。昨年末の 10代・20代の高市内閣の支持率が9割を超えるなど、若者からの支持率も上昇傾向にある。しかし、自民党に学生部が存在していること自体、多くの若者に広く知られているかというと、決してそうではないだろう。全国規模での組織づくりを強化し、広く同世代への広報につなげ、村木氏のような若手政治家候補をどんどん育成していく必要があるように感じる。自民党学生部の認知拡大は、政党学生部そのものの存在感を高め、若者の政治参加の裾野を広げる契機にもなり得る。これからの自民党学生部の動きに期待したい。