コラム私感雑感

社会問題との距離を縮めるために—音楽がつくる“話しやすさ”―

飯沼雄介(Climate Live Japan実行委員会) 2026/06/05

子供の頃から毎日ニュースを見る家庭で育ったので、社会問題に対して興味や関心はありました。しかし、実際に行動することにはどこか距離を感じていました。今回はそんな私の社会問題に対するアプローチ方法を紹介します。


私の気候変動問題との出会いは大学4年生の時。アルバイト先で環境団体に所属している友達に出会ったことがきっかけです。一緒に行ったカフェで友達からこう言われました。「気候変動を止めなければ、地球に住めなくなるかもしれない」と。そしてそのため、署名やデモのアクションに参加していることを打ち明けてくれました。その時の彼女の鬼気迫る表情は、今でも忘れられません。その友達との関係性を通じて少しずつ、気候変動問題への危機感を私も抱くようになっていきました。


それから約半年後の2022年9月、東京で開催された「気候変動マーチ」に参加しました。そこでは自分で気候変動問題に対する思いを込めたプラカードを作成し「Climate Justice(気候正義)」と声に出しながら東京の街を練り歩きました。その時、街行く人の視線が気になりました。無関心のような、あるいは距離を置くような視線に感じられて、「自分たちの行動はどのように受け取られているのだろう」と考えさせられました。マーチの最後、Climate Live Japanの告知を耳にしました。”Climate”と”Live”という言葉から、これまでとは違う楽しみながら社会問題と向き合う形があるのではないかと感じました。


Climate Live Japanは年に1回程度「音楽×気候変動」をテーマにした音楽ライブを開催しています。それ以外にも各種環境イベントや音楽ライブへのブース出展を行っています。私自身、活動を始めて4年目になります。音楽を通じて気候変動について考えるきっかけの場にしたい。そんな思いで、今もClimate Live Japanの活動を続けています。この活動を通じて、気候変動はとっつきにくいと思われがちですが、音楽をきっかけにすることで、考えたり話したりするハードルが下がることを実感しました。


例えば、毎年7月下旬に開催されているFUJI ROCK FESTIVALにブース出展した際のことです。多くの来場者が、暑さを理由に将来の開催に対する危機感を抱いていることを知りました。こうした反応からも、音楽がきっかけとなって気候変動を身近に感じる人が増えているのではないかと感じました。ライブ会場にて音楽を楽しみつつ気候変動について考える場ができました。


このように、音楽を通じて気候変動について考える「きっかけ」をつくることの重要性を、活動の中で実感してきました。そして現在、トロントで生活する中でも、その感覚を改めて感じる出来事がありました。


現在、私はカナダ・トロントに滞在しています。冬の厳しさで知られるこの街ですが、今年1月には記録的な大雪が降ったと現地の人から聞きました。実際に生活している中でも、天候の変化の大きさを感じる場面が少なくありません。


この大雪が気候変動と直接関係しているのかどうか、私には正確なことは分かりません。ただ、こうした極端な気象の話題が日常の会話の中で自然と出てくることに、これまでとの違いを感じています。
日本でも「暑いね」「最近の気候は少しおかしいよね」といった会話はよく交わされています。しかし、トロントではそうした何気ない会話から、気候変動という言葉やその背景にまで話が広がることが多いように感じます。社会的な話題について意見を交わすこと自体への心理的な距離の違いも、影響しているのかもしれません。その違いが、私にとっては印象的でした。


こうした経験から、改めて「話しやすさ」の重要性を実感しています。気候変動のような大きなテーマであっても、日常の中で自然に話題にできるかどうかで、人との距離や理解の深まり方は大きく変わるのではないでしょうか。


Climate Live Japanの活動も、まさにその「話しやすさ」をつくる試みだと思っています。音楽という共通の楽しみを通じて、気候変動というテーマに触れることで、構えずに考えたり、誰かと話したりするきっかけが生まれます。実際にイベントの場では、「難しそうだから避けていたけれど、ここなら話せる」といった声を聞くこともありました。そうした言葉を直接受け取る中で、自分たちの活動の意味を実感する瞬間でもありました。


遠い問題のように感じていたものが、少しだけ自分ごとに近づく。その小さな変化の積み重ねが、社会を動かす力になるのかもしれません。トロントでの生活を通して感じたことと、これまでの活動での経験が、私の中で少しずつつながってきています。


気候変動に限らず社会問題について考えるハードルは高いと感じています。しかし、他の人と考えを共有していかないと、グローバルな規模の問題である気候変動を止めることは難しいです。私は今後も、気候変動についてハードルを下げる役割を果たすべく、Climate Live Japanの活動に精進していこうと思います。


私自身もまだ模索の途中ですが、音楽を通じて社会問題と向き合うこの活動を続けていきたい
と思っています。この文章が、誰かにとって小さなきっかけになれば嬉しいです。