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主に西日本における近年の学費運動とその周りについての記録、所感

主に西日本における近年の学費運動とその周りについての記録、所感

大塔勝 2026/05/25

 「大都市では運動が盛り上がるが、地方では…」
学生運動をはじめとする社会運動・学生運動をめぐって聞かれる言葉だ。私も、運動は東京や関西のほうが人口の分だけ多種多様な実践がなされ、基盤がより充実していると感じる。東京であれば国会もあり、議会に学生や市民の声を中央に直接届けることも容易だ。では、そうではない地方、大都市から離れた地域では運動が盛り上がっていないのか?僕が九州で生まれ育った人間であることを差し引いても、答えはNOだと思う。近年、僕が知る範囲においても地方において学生運動・学生の自主的なムーブメントが盛り上がり、また拡大するケースが見られるようになった。私はそれらの内、九州地方とその周辺におけるいくつかの運動にかかわってきた。

 この記事では私がかかわってきた運動・ムーブメントを紹介し、そこから話を展開してみようと思う。九州周辺における運動において今回取り上げる運動のキーワードは「学費運動」「学生自治」「学内規制」だ。

 現在の日本における学費運動・学費問題の盛り上がりの開始点は、2024年の東京大学の授業料値上げ問題にあると考えられる。大まかな時系列として、東京大学の授業料値上げ問題を発端に、2024年度には広島大学、熊本大学、大阪大学、2025年度には埼玉大学、山口大学といった首都圏以外の各地の国立大へと急速に問題が広まっていっているからだ。加えて、先程名前を挙げた大学ではいずれも抗議運動が行われている。

 また、興味深いこととして、2024年の段階で値上げ検討が公表されなかった大学においても運動に関心を持ち、参加する学生が地方においても複数見られた。そのうち、現在も社会運動へのコミットを続けている人が複数人いる。私も東大の学費問題をきっかけに学費運動へのコミットを始めた一人である。

 ムーブメントの中にいた私から見て、この現象を説明する上で重要であったと思われるものの1つとして「だめライフ愛好会」の存在がある。「だめライフ愛好会」は中央大学の学生が2022年秋にtwitter(現X)上でアカウントを立ち上げ始まったもので、日本各地の大学の学生が自分の大学名のアカウントを作って広まったものだ。私は琉球大学のだめライフを名乗って活動していた。各会の活動は様々であったが、ネット外でも活動している多くのだめライフが学内または路上で鍋を行っている。琉球大学でも鍋をやろうとしたが、沖縄は暑いので鍋ではなくチョコフォンデュを4月に2度ほど行い、寒くなった12月に鍋を人文学部棟前の広場で実施した。また、複数の大学のだめライフが学内規制に抗う行動を繰り広げていた。中大だめライフ・東海大だめライフはサークル棟の改修・廃止をめぐって運動を繰り広げた。また。中大だめライフ(この時はだめライフ神奈川に改称)に次いでXのフォロワー数が多かった東大のだめライフは、東大の値上げ問題時、値上げそれ自体に加えて学生が大学の意思決定から事実上除外されていること、学内への警察導入や集会規制等に対して抗議の声を上げていた。

 東大の学生諸団体および東大だめライフの活動、まただめライフが掲げている「だめがだめでいられる世界」と学費問題の関係、また学費に関する全国的な行動の呼びかけなどもあってか、2024年には複数大学のだめライフ関係者が学費問題に言及し、また団体に所属したり、アクションに取り組んだりしていた。学費問題に関係したある集会では、学生側からの参加者が全員だめライフ関係者ということもあった。私も学費運動周りで起きた学内規制の問題等を受け、学費問題以外の学生運動、具体的には学内規制問題へコミットするようになった。琉大では、学生会(革マル系自治会・公認)の努力によって、人通りの多い場所にビラ貼りや立て看板設置をしても撤去されない力関係がある。しかし、工学部で学費値上げ反対のビラ貼りを無届でしていたところ、大学教員に怒られたことがあり、また事務窓口でのやり取りを通して工学部における届出の上でのビラ貼りの厳しさ(ビラは1枚まで、大学が掲示板に貼る)を知った。琉球大学でもこのようなことが学生個人に起きるのだと実感した(これ以外では特に弾圧なし)。

 学内規制へのコミットとしては、サークル公認制度反対運動にノンセクトとして関わった。琉大当局は2024年11月、突如として来年4月からのサークル公認制度導入予定を学生会に通告してきた。その内容は学内掲示の許可制導入、サークルメンバーの年次制限、政治・宗教活動の禁止、非公認団体が「琉球大学○○サークル」などと名乗ることの禁止、部室棟の自治権剥奪などと不当極まりないものばかりであった。公認制に対してサークル連合が反対運動を呼びかけたところ、学生は自分たちそれぞれの課外活動団体の立場から公認制度導入反対の決議・メッセージを文化系・体育会系の境なく発してくれた。私は大学が学生との対話に応じることの要請・規制根拠の曖昧さへの批判に加えて、2004年の国立大学法人化後の大学改革問題の観点から、大学における学長(現在、国立大学長の選出には、前学長および政財界からの意見が強く影響するようになっており、選挙で選出されるわけではない。選挙結果がそのまま反映されている大学は、単に教職員が執行部との間に強い力関係を築けているにすぎない)の権限強化と本問題の関係を指摘し、続いて公認を審議する委員会の人事を、学長の命を受けた副学長が握っていることから、学長個人・政財界の意向がサークル活動に直接影響を与えうるとして公認制度を批判した。12月下旬の学生支援課への要請行動では170枚を超すメッセージおよびサークル連合の抗議声明を大学に提出した。その1か月後、大学は4月からの公認制度導入はしない、学生会・サークル連合の意見を聞かずに話を進めないとの回答をし、学生の力で規制強化を粉砕することができた。

 また、九大進学後には学費運動によりコミットするようになった。先述した大学での抗議運動の内、私がかかわったものは、それぞれ10月22日と12月12日に山口大学で行われた「山大・広大・九大合同 学費値上げ反対集会」「全国管理・規制強化反対集会」である。このうち、10月の集会は山口大学が9月下旬に公表した授業料値上げ検討を受け、「広島大学学費値上げ阻止緊急アクション」の代表が「山口大学学費値上げに反対する学生有志」に連絡し、また以前よりつながりがあり、私が代表を務める「九州大学学費問題を考える会」にも話を持ち掛けて実現したものである。このうち、「広島大学学費値上げ阻止緊急アクション」は2024年5月、授業料値上げの検討を学長が記者会見で話した直後にでき、約1か月で17612筆の署名を集めて事実上の撤回へと追い込んでいる。また、九州大学の団体は2024年における全国の学費運動の高揚を受け、まだ値上げが決まっていない段階で作ったものだ。

この集会は学生運動の基盤がない大学での実践となり、そのため、学内で展開したらどのような弾圧を受けるか、学生大衆からどのような反応が返ってくるか、全くわからなかった。私のよく知っている運動で使われるシュプレヒコール等のスタイルの有効性も不明だ。様々な異論はあったものの、最終的にビラのスタイルは表にイラスト付きの短い文章をつけ、裏は文字たっぷりのスタイル。またデモ行進はシュプレヒコールにはじまり、「山大民主化絶対貫徹」「情報なくして対話はできない」等のコールを交えるものとなった。

 集会当日のビラの受け取りは非常によいものであった。途中、山口大学の学生支援課が学内ビラ撒きの許可をとっていないことを理由に中止を求めたものの、根拠自体がでっち上げだったので容易に跳ね返すことができた。集会では、山口大学がとった情報公開の不十分さ、工学部のみがあるキャンパスで行われた「学生説明会」の欺瞞、また各地の大学で起きている問題と山大の問題の共通点などについて発言がなされた。

 集会のあとはデモ行進。出発準備当初、参加者は20名程であった。しかし、出発前にある教員がここ数年山大で起きた、学生会館の空調有料化や学祭での飲酒規制の話と授業料値上げ問題の関係をアジった。授業料値上げにおける大学の横暴を許せば、学生にさらなる抑圧がかかるぞと。アジの内容、そしてそのうまさもあり、デモ参加者は当初の人数の数倍以上に膨れ上がり、実に100人もの規模になった(ちなみにこの規模は、山口大学において1970年代に教職員組合が行ったデモ以来、半世紀ぶりのものである)。この運動は、盛り上がりの点から2025年に学生がキャンパスで起こした運動の中でも特に注目され、またその規模から運動が活発な地域の人々にとっても衝撃的だったとの感想を、他地域の学生活動家の人々と話していてよく聞く。デモ行進の終点、山大本部棟に達すると学生はそのまま本部棟に突入し、学長代理に要望書を手交した。

 約2年、学生運動に西日本からコミットしてきて思ったこととして、「地方」の運動は単に中央の議会において各地の声として取り上げられるだけではなく、それぞれの地方での実践であると感じた。10.22の集会規模は、私にとって地方でこれだけの規模のデモを実現できることの証明になり大変うれしく思った。また、規模の話を抜きにしても地方で大学の問題に対しての抗議集会・デモを組織できたことも良かった。10.22集会における教員からの発言にもあったが、学生総体にとって不利益・理不尽となることを当局が課そうとした際、学生は抵抗していく必要があると私は思う。抵抗がなければそれらを粉砕することはできないし、またさらなる抑圧を課してくるからだ。理不尽がかかることに大都市・地方の垣根はない。また、ローカルな問題である以上、現場での闘いを組織することがこれらを跳ね返すうえで必要不可欠である。山口大当局はこの後、10.22における弾圧失敗を受けて、学生のビラ撒き全面禁止の規則を課そうとしてきたが、山大・広大・九大に加え、全国学生・団体の連帯・運動参加を得て、学生支援部等への激しい抗議運動を行った末、全面禁止を粉砕することができた。

 学内問題のようなローカルな問題にせよ法改正のような中央での問題にせよ、それぞれの現場・足元から運動を起こして持続させ、またそれを可能とすることを目指してゆきたい。