コラム私感雑感

引き裂かれる家族-移民社会の現実-

タナカ 2024/09/07

「あなたの難民申請は却下されました。この在留カードは今から無効になります」

 

入国審査官は交通違反切符を切るような事務手続きで、難民申請が棄却されたことをクルド人家族にそう伝えた。

 

動画配信サイト「NETFLIX」 などで配信されている映画「マイスモールランド」のワンシーンだ。難民申請を却下された外国人は、それまでの在留資格が無効になり、仮放免措置が取られる。この仮放免期間中は、居住地の県から外に出るときには、事前に管轄の入管へ申請する必要があり、仕事をすることもできなくなる。これらの制限を破った際には、入管に収容され、いつ外に出ることになるか分からない。非常に不安定な立場に置かれる。

 

映画の家族のケースでも、何か犯罪を犯したわけでもなく、トルコ本国で政府から迫害されていたクルド人の主人公(女子高校生)の父親が難民として日本に逃れてきていただけだった。それが難民申請が棄却された途端に、在留資格を取り上げられた。在留資格を取り上げられた後も、娘たちの学費や生活費を稼ぐために仕事をしていたところ、警察官に身分を尋ねられた際に不法就労が発覚し、父親が入管に収容された。もちろん法律を守ることは大切だ。しかし、仕事をせずに生活することはできないし、主人公たちも非常に不安定な生活を強いられる。フィクションではあるが、家賃の支払いに困った主人公が友人の誘いをきっかけにパパ活をしてお金を稼ごうと苦悩するシーンもあった。

 

なんの罪もない子供たちの生活にまで大きな影響を及ぼす。理不尽な難民制度に一家が翻弄されていく本作は、胸が痛まずして鑑賞することはできない。インターネットの掲示板などでは、こういったケースについて、「法律を破った外国人の自業自得だろ」、「自分の国に帰れば良いじゃないか」などといった言葉が飛び交っている。しかし、本作のケースのようになぜ彼らが日本で追い詰められてしまったのか、そこを考えずして根本的な問題は解決されない。

 

今年6月に施行された改正入管法は、従来適用されていた「難民申請中は送還が停止される」とした規定について、「3回目以降の難民申請は、『難民認定すべき相当の理由』を示さなければ送還する」とした。改悪である。ますます日本国内の難民申請者を追い詰める制度となった。

 

弁護士団体やNGOも改正入管法の運用について懸念の声を上げている。改正法の廃止が一番ではあるが、せめて日本政府は真摯に彼らの声に耳を傾けて法律の運用を行うべきではないか。