沖縄を再び戦場にさせないためにⅠ
「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」・山城博治さんインタビュー
2024/09/15
2023年11月23日、沖縄・南西諸島の自衛隊強化に反対する初めての大規模集会が、沖縄県那覇市で開催された。沖縄での軍備増強の動きに早くから警鐘を鳴らしてきた山城博治さんに、県民大会の成果や運動の展望などを聞いた。
待望の知事出席
ー沖縄では昨年11月、コロナ禍で中断していた県民大会が約4年ぶりに開催されました。
昨年11月23日、那覇市の奥武山公園陸上競技場で、1万人の市民を大結集した県民大会を開催しました。国が「台湾有事」を理由に、南西諸島の軍備増強を着々と進めるなか、沖縄を再び戦場にさせてはいけないとの思いで、大勢の市民が集まりました。「全国連帯!沖縄から発信しよう!11・23県民平和大集会」と銘打ち、一昨年12月の安保関連3文書発出後、これに抗議する初めての大規模集会となりました。
安保3文書には驚愕しました。いま沖縄から声を上げなければ大変なことになるとの思いでした。県内各地の団体に呼びかけて大集会を開き、抗議の声を上げなければ、沖縄は本当に戦場にされてしまうと思ったのです。
結果、1万人の市民を結集できました。当初より〃万人集会〃を公表して取り組んできましたから、目標を達成できて安堵しました。
―玉城デニー知事も出席されました。
玉城デニー知事が来賓として県民大会に出席して挨拶してくれました。知事は、その県民大会の直後、県の「地域外交」の一環として台湾を訪問することになっていました。那覇空港に行く直前の、忙しい合間をぬって馳せ参じたといったかたちでした。
知事が来るかどうかは、県民大会の直前まで確かなことはわかりませんでした。知事が公務で欠席することも十分考えられました。副知事が知事代理で出席し、知事挨拶を代読するといったパターンも想定していました。
―なぜ知事の出席が大きな成果だと?
ご存じのとおり、オール沖縄は、辺野古新基地建設反対、普天間飛行場の閉鎖撤去、そしてオスプレイの県内配備反対のいわゆる「沖縄建白書」の理念で結びついた、運動体であり政治勢力です。亡くなった翁長雄志知事は、この3本の柱で、保革が「腹八分、腹六分」の精神でまとまろうと呼びかけたのです。
自衛隊の問題は、私たちオール沖縄にとって実に微妙で複雑な問題です。翁長さんは、もともと、自民党沖縄県連の幹事長を務めた県内保守政界の重鎮でした。そのあとを継いだ、玉城デニー知事も、もとは小沢一郎さん率いる自由党の衆院議員で、今でも、自身の政治スタンスを保守・中道だと称しています。玉城知事は、基本的には自衛隊を容認しているし、日米安保も容認の立場です。ここが私たちとは立場が異なります。
こうした事情から、オール沖縄に自衛隊に絡む政治課題を持ち込むことには、内部で実に様々な議論があるわけです。オール沖縄は、辺野古反対でまとまってきた経緯があるので、そこに自衛隊反対や自衛隊強化の政治課題を持ち込むことは本来の趣旨から離れるといった意見です。そうした意見が出るのは致し方ない面もあります。
こうした微妙な状況の中で、玉城知事は駆けつけてくれたのです。自衛隊容認の知事としても、住民合意がないまま次々に先島諸島に自衛隊基地が造られた挙句、さらに長距離ミサイル配備などの自衛隊強化の動きを黙って見過ごすことはできなかったのだと思います。このままでは、本当に沖縄が戦場になってしまうとの危機感を共有できました。
―知事が来る予感や手応えはあったのですか?
知事が今回の県民大会に出席する意向を示唆したのは、昨年11月5日、「オール沖縄会議」が北谷町で開いた「国による代執行を許さない!デニー知事と共に地方自治を守る県民大集会」のときでした。その集会は、その名のとおり、自衛隊ではなく、辺野古新基地建設に抗議し、また、代執行で強権を振るおうとする国に先頭に立って戦う知事を県民として応援するためのものでした。
ところが、知事は、その場で、「11月23日には大きな県民集会が予定されているようです。みなさんの力でぜひ成功させましょう!」と呼びかけたのです。私たちは、知事が「成功させましょう!」とわざわざ言ってくれたのですから、知事出席の可能性は高いと踏んだのです。そこで、それまで若干躊躇していた知事出席の要請書を副知事に手渡しました。また、そのころには、沖縄の地元紙も、どうやら知事が県民大会に出席するようだと報道しはじめました。
本当に最終局面といってもいいのですが、開催わずか2週間ほど前で、「流れが変わった」と感じました。(続く)